アンティークミシン
80代のおばあちゃんから古いミシンを処分してほしいとの依頼がありました。これは仕事ではなく,家族でお付き合いしている方のお宅で,部屋を広く使うために不用品を処分するお手伝いをしているときでした。ミシンは三菱製で,見た目はレトロでおしゃれなアンティークミシンです。
私はミシンはおろか洋裁のこともさっぱりわかりませんが,足踏み式を改造して電動モーターを付けコンパクトになったミシンは,使い込まれているもののよく手入れされていて,大切に使っていたものだということが一目でわかりました。細かい部品もしっかりしています。自宅に持ち帰ってフットスイッチを付けて動かしてみた結果,動作には特に問題なさそうです。
これをどう処分するか考えました。捨ててもいいとのことだったので,じゅんかんコンビニのようなところに持ち込むか,40リットルの札幌市指定ごみ袋に入れて燃えないゴミとして出すか…。でもおばあちゃんが大切にしてきたミシンを無下に捨てるのはあまりにも気が引けます。
それで,試しに地域密着型掲示板というサイトに載せて,ほしい方を探してしてみることにしました。スマホで画像を撮って記事を書いて投稿します。一応オークションサイトの落札価格をリサーチして,お値段はリサーチ結果より安い5,000円に設定してみます。しばらくは問い合わせも来ませんでしたので,こんなミシンはもう需要がないのかと思っていました。それでも閲覧数は200を超え,4人の方がお気に入りに登録してくださいました。実際に使うかどうかは別として,興味のある人は多いのかもしれません。
やがて一人の女性の方が応募してこられました。その方のお仕事の関係で引き渡しは約20日後の2月7日に決定です。引き渡しまで時間があったので,果たしてうまく引き渡せるのか,ちょっと心配しましたが,メールの文面から誠実そうな方だし,何よりミシンに愛着を持ってくれそうな感じだったので,その日を待つことにします。
引き渡し当日となりました。相手の方は若い女性のようですし,晩の時間の引き渡しということもあり,娘に付き合ってもらって二人で札幌駅北口の指定場所に行くことにしました。車の中で待っていると,約束の時間通りに黒い軽自動車で来てくださいました。車のハッチバックを開けミシンを見た瞬間表情が輝き,これからこのミシンで色々作ってみようと思うと嬉しそうに仰っていました。無事に引き渡しができてよかったです。ところが後日,ミシンに不具合があることがわかりました。最初は返品をお考えでしたが「諦めきれないので修理に出してみる」とのメールがありました。ミシンは無事に直って使えるようになります。本当に愛着を持っていただいて,自分もうれしく感じました。おばあちゃんの不用品は,その方のお気に入りのミシンになりそうです。